ブログ【二次小説更新】水泡に帰す
皆さん、こんばんは。
いつもお立ちよりくださって有難うございます。
大股開きシリーズ その7「水泡に帰す」をアップしました。
「野試合」の続きです。
シリーズの後半は、最後までの構想だけで、メモをとっては放置をしたまま。
なかなか、書きたいことの整理がつかずにいました。「野試合」までは、ずっと陽の光の中をずっと駆け回るような斎藤さんです。上洛前の弱冠十八歳の青年。元服こそしていますが、道場稽古に明け暮れ、独り立ちはしておらず、「うだつが上がらない」と言われれば、本人も否定はできない状態です。酷い言い方でごめんなさい。まだ海のものとも山のものとも定まらない、斎藤一になる前の山口一のイメージです。
幕末頃の下級武士。足軽、中間と言われる身分の日々の暮らしはどんなだろうといつもぼんやりと想像ばかりしています。
今も本郷三丁目の交差点(かねやす店舗前)に残る川柳の看板 (ブログトップ画像は、江戸時代のかねやす店舗内の錦絵。文京ふるさと館資料より)
「本郷も かねやすまでは 江戸のうち」と謳われたように、山口一が暮らした本郷は、幕末頃にかなり広がった「江戸市中」のぎりぎりの端っ子に位置しています。二次小説では、文久二年の春から夏にかけて、本郷に暮らす山口一が江戸市中の上野にある練兵館、郊外にある甲良屋敷の試衛場、さらに武州日野の佐藤道場まで出稽古に出て、僅かな収入を得ながら剣を振るうことに夢中になっている姿を描いて来ました。山口一は、試衛場を通して、開けた道でしっかり精進しようと頑張っています。因みに、この年の夏は江戸から東海道に向かう薩摩藩の参勤行列に横浜の居留地から馬で遠出していたイギリス人が接触し、無礼討ちで殺傷された生麦事件が起きています。このような出来事から薩摩藩内に攘夷論の機運が高まり翌年の薩英戦争に繋がって行きます。諸外国の進出を武力で追い払う。このムーブメントを攘夷志士達が支持し京に集まり過激な行動に出ます。不穏な空気が漂う中、「攘夷問題」について話をする必要があると、朝廷から将軍家茂に参内するように要請がありました。上洛する将軍の護衛、そして夷狄から国を守ろうと江戸で有志の浪士たちが結集することになります。もう時代の流れは激動の幕末維新に。
今回は、江戸に滞在中の土方歳三をたっぷり描くつもりが、主題から遠ざかるので大幅に一度書いた部分を削りました。今まで書いたものを消し去ることはあまりなかったのですが、いつもの如く、お正月中に筆が暴走するに任せてしまいました。寝かせた(冷静になって読み返した)後の判断です。
以下、本編のネタバレを含むので記事を畳みます。
「葱間の土方さん」は落語の演目「ねぎまの殿様」から。江戸の本郷界隈が描かれる落語。「料理番の斎藤氏(さいとううじ)」が出て来て、なんとなく「斎藤さん」繋がりの面白い落語です。葱間鍋は冬場に食べたくなりますね。土方さんは、私の解釈ではかなりの食道楽です。味の好みは「江戸前」「見た目重視」で、醤油味醂の濃い味付けが好き。二人で食事をする機会の多かった土方歳三と山口一は、一種身内のような強い関係性を築いていたのではと思います。史実では、土方歳三は帯刀を許されず試衛場への出入りはできなかったので、剣術の稽古で江戸に出ることはなかったようです。もっぱら武州多摩での鍛錬だけでした。薄桜鬼では土方歳三と斎藤一の関係は、既に上洛前に確固たるものが築かれていた印象が強く、いつどのぐらいの頻度で二人が顔を合わせていたのか考察してみました。斎藤一は恐らく小説で描いた文久二年より以前から試衛場や佐藤道場に顔を出していたのでは、とも思うこともあります。今回描いているシリーズでは、二人の事は短い期間に築き上げた関係性として描いています。実際に残っている書簡などから、斎藤一は土方歳三より近藤勇の方がより近しくしていたのではと思う事もあります。
私は薄桜鬼の斎藤さんと土方さんの強い信頼関係が大好きです。この部分は薄桜鬼らしさだと思っています。
今回、話の流れで山口一が遊女と出逢う場面があります。斎千以外の話は嫌だと思う方、抵抗があると思うので、申し訳ありませんが、後半は読み控えて貰えた方がいいかも。こういうの、本当に嫌ですよね。物語進行上どうしても削れなくて、申し訳ないです。先に謝っておきます。御免なさい。
自分の小説で書いておきながら、斎藤一に馴染みの太夫がいたという歴史資料などを目にすると、勝手ながら知りたくなかったなあと思ってしまいます。当時の花柳界や遊郭や茶屋の資料から新選組や幕末の志士たちの女性関係を研究されている歴史研究家さんもいて、興味深い観点だと思いますが、隊士たちの具体的なお相手の女性のことはあまり明らかにされなくてもいい。こういった事は想像の域がいいかも。正直、私は薄桜鬼をやっている乙ゲー脳なので、嫌です(;´・ω・)
近藤勇の挫折については、残っている記録にそって描きました。講武所指南役は内定までされていたのが突然取り消され、近藤さんは意気消沈して数か月の間、表には顔を出さなかったと門人の日誌に書かれています。
小説の中では、あくまで山口一から見た試衛館の面々を描いています。
暗い展開ですが、薄桜鬼黎明録に繋がるように描いていくので、お付き合い頂ければ幸甚です。
それではみなさん、寒さが厳しい折、どうぞご自愛ください。
ちよろず