ブログ【小説更新情報】戌の日
「寒椿」の続きです。
斗南にてシリーズには、まだ書いていないエピソードが数話残っていて、明暁シリーズと連載中の「戊辰一八六八」にオーバーラップする短編になります。
今回のエピソードは、斎千夫妻が初めて子を迎える準備を始める頃の話。
このエピソードの風景は、女衆の楽しい様子(母親になる千鶴ちゃんを囲う八瀬の女たち)に押しやられるような男衆(斎藤さんと馬別当)の構図が最初に思い浮かんで、当初は出産が女を中心に起きる事で、斎藤さんが蚊帳の外のような状態になる。そんな話でした。「おしるしの帯」の儀を描いているうちに、斎藤さんがしっかり話の中心に位置するようになって、父親になる斎藤さんもたっぷり描くことに。
男の人が父親になる実感ってどういう感覚なのでしょう。女性は身体的な変化もあって心身ともに母親になる準備は自然に出来上がっていくような気もします。千鶴ちゃんの境遇から、千鶴ちゃんは夫婦二人きりで子供を産んで育てる覚悟をしていて。斗南時代の二人は、一種現代の核家族に近いような気がします。互いが縁の二人。頼る実家もない千鶴ちゃんにとって、千姫は血を分けた姉妹のようで、とてもありがたい存在です。鬼の血族の結束は強いですね。
史実における斗南県のこの頃の食糧難はかなり深刻で、多くの藩士が土地を去ってしまっています。行先として松前藩(新八さんのいる藩)や、開拓使として蝦夷へ渡ったことが記録されていますが、新天地での生活も過酷なものでした。斎藤さんが上京を決めたのも、飢饉続きの土地で子育てをすることが困難だと判断したことが大きな理由だったと伝えられています。
小説の中では斎藤さんの心配をよそに、千鶴ちゃんは二頭の馬と暮らす五戸での生活を限りなく楽しんでいます。また斗南での生活のエピソードを機会があれば書いていきますね。
ちよろず