脱出
戊辰一八六八 その9
明治四年四月三日払暁 流山
部屋の外で、島田魁の叫ぶ声が聞こえた。
慌てた様子で廊下に立つ島田は、腰に大小を差して息を切らしている。たった今屯所の外の見張りが駆け付けて、敵に包囲されているという報せがあった。そう報告する島田の立っている廊下の先の柱には、薄茶色の巾布が結び付けてあるのが見えた。平助の知らせ。
——羅刹隊が何か事を起こす時、これを柱に結ぶ。
斥候からの報告で、薩摩藩旗が一町先に迫っているという。斎藤は、集まれるものは直ちに広間へと指示を出した。刀を手に取ると、廊下から中庭を横切り土蔵に向かった。流山の駐屯所は母屋の西側に大きな蔵を構えている。そこは武器庫と羅刹隊が待機する場所として提供されていた。しかし、土蔵には鍵が掛けられている。おかしい。中に誰もいる様子がない。羅刹兵は何処へ。平助。夜中の内に移動したのか。
斎藤は島田に促されて母屋に戻った。緊急な合議で、「ひとまず先陣として斎藤たちが駐屯所の裏門から山に向かって脱出するように」、土方から指示された。陽が昇る。明るくなると敵が攻めてくる。土方は、「俺等のことは心配するんじゃねえ。薩兵の奴らをかいくぐって後を追いかける」と言って笑った。
千鶴は既に斎藤の指示で三番組隊士たちと荷物を母屋の裏戸から外に運び出していた。最後に母屋の廊下に戻った時に、柱の陰から局長の近藤が姿を現した。千鶴は慌てて駆け寄った。
「雪村君」
近藤は千鶴の名前を呼ぶと、その両手をとって手に銭入れを持たせた。重たい。君の逃亡資金だ。銀五百匁入っている。近藤はそう言って。千鶴の眼を見詰めたまま頷いた。
——気を付けて行きなさい。
大きなごつごつとした近藤の手がゆっくりと千鶴の手から離れた。廊下の向こうで、土方が「近藤さん、近藤さん」と叫んでいる。千鶴は頷いた。近藤は少し困ったような表情を見せたが、無理に微笑みを作るような様子を見せて。柱の向こうの暗がりに消えて行った。
千鶴は島田に促されて母屋の裏戸から外へ出た。裏門までの一軒の距離。島田に耳元で、「私が合図をしたら、走り抜けてください」と囁かれた。緊迫した瞬間。千鶴は息を呑んだ。敵兵が自分たちに鉄砲を向けているかもしれない。そう聞かされた千鶴は、身がすくむ思いがした。その時、急に空気が変わった瞬間があった。斎藤さん。斎藤さんの匂い。振り返ると、自分の背後に斎藤が立っていた。既に両肩から荷物を斜め掛けにしている。真剣な表情で、前に立つ平隊士に、「順に、行け」と指示している。千鶴の気持ちは落ち着いてきた。
「援護を頼む」
「雪村、次に出るぞ」
背後から覆いかぶさるように斎藤が自分の身を囲うのが判った。右肩を抱きこまれるような態勢のまま、半分抱えられるように走り出した。その直後に銃の発砲音がした。
門の外に出ると、銃の音は母屋の玄関方面から聞こえた気がした。斎藤の大丈夫だという声が聞こえた。「あの音は百間は離れた場所で放たれたものだ」「走るぞ」という声と共に。裏山の林の向こうに駆けだして行った。暫く走ったのち、集まった隊士の確認をした。平隊士全員百二十名が無傷で脱出できたことが判った。
斎藤は車座になって武器の確認を行い。ただちに駐屯所に残った者の救出に向かう準備を始めた。斥候に尾形俊太郎と安富を走らせた。すぐに戻った尾形と安富は、母屋の廻りが敵兵に取り囲まれていると報告した。土蔵は開け放たれて、既に羅刹隊が投降をしている様子だったと話す安富に、斎藤はもう一度問いかけた。
「投降しているのは土蔵に居た者か」
「はい、山南総長と隊士数名。大砲二門が既に運び出されて」
「敵兵の数、三百」
斎藤は全てを察した。平助の知らせた通りであったか。だが、ここで臆してはならぬ。全員でここを脱出して会津へ向かわねば。土方の声を思い出す。
——斎藤、先に会津へ向かえ。俺等は後を追いかける。
斎藤は、「副長と局長をお救いする」と言って、隊士に母屋への突撃の準備をさせた。だが、島田魁はこのまま駐屯所に戻れば、全員が敵兵に捉えられてしまうと云って反対した。
「斎藤さん、会津へ向かいましょう」
突然、声を上げたのは千鶴だった。それまで、皆が殺気立っていたが。先頭に立つ斎藤の前に駆け寄った千鶴 は、「土方さんが皆さんを斎藤さんに託されました。皆さんを、無事に会津に連れていくことが近藤さんや土方さんの御意志です」
——会津へ行きましょう。
鶴の一声だった。ざわついていた空気がしーんと静かになった。斎藤は少し驚いた表情をしていたが、真っ直ぐに自分を見上げる千鶴の真剣な表情を見ると、黙ったまま頷いた。斎藤の指示で直ちに裏山を抜けて利根川を目指す準備がされた。この間、四半刻もかからなかった。猛烈な勢いで荷物が纏められ、自分たちの足跡も消して、斎藤達は林の中を身を低くして駆け続けた。背後で威嚇射撃の音が聞こえたが、駐屯所を離れるにつれて薩兵の立てる音は遠ざかって行った。
正午を過ぎた頃、利根川の布佐という場所で、小舟を借りることが出来た。全部で十隻。川の流れは緩やかで、船頭は舟歌を歌っている。さっきまで銃兵の追っ手から逃げていたのが嘘のようだった。今日は有難い事に朝からずっと分厚い雲が空を覆っていた。それでも、どんよりとした光は斎藤の体力を消耗させる。筵で覆われた船底で横になる斎藤の傍に、千鶴はずっと座っていた。時折揺れる舟に斎藤の様子が気になる。千鶴は筵の中にそっと手をいれて眠る斎藤の手を握った。長く節ばった指、大きな掌。温かい。よく眠っていらっしゃる証拠だ。千鶴は安堵した。
千鶴が気がついた時、既に外は陽が落ちて暗くなっていた。いつの間にか斎藤は起きていて、船底に座り、その膝に千鶴は頭を載せて眠ってしまっていた。恥ずかしい。どれぐらいの間眠りこけてしまったのだろう。飛び起きた千鶴に、斎藤は「そろそろ着く」と静かに下船の準備をするように指示した。
舟を降りた直ぐ近くにある宿に全員で泊まることになった。大きな宿で、すぐに夕餉の膳が用意された。煮魚と白米がふんだんに振る舞われて。隊士全員が舌鼓を打った。島田の話だと、安房の西、銚子に居るということだった。食事の後、直ぐに就寝したが、千鶴は再び夜中に斎藤に起こされた。官軍に取り囲まれているという斥候からの報告があったらしい。千鶴は、荷物をまとめて、ずっと灯りを消した部屋で、合議が終わるのを待っていた。暫くすると、斎藤が部屋に戻って来た。
「暗い内にここを発つ。銚子港で船を二隻用意した」
千鶴は黙ったまま頷いて、荷物を持って立ち上がった。斎藤は、逆に窓辺の壁にもたれて腰を掛けた。まだ、時間がある。休むとよい。そう言って、座布団を自分の横に置いた。千鶴は座布団を斎藤にすすめるように押し返したが、「あんたなら、これを布団代わりにできるだろう」と言って微笑んだ。千鶴は頷いた。連日明け方まで起きていて疲れが溜まっていた。直ぐに斎藤の隣で丸くなって横になった。斎藤が自分の隊服の上着を掛けてくれた。温かい。そのまま一刻の間、深い眠りについた。
*****
船上乱闘
宿を明四ツに発った斎藤達は、銚子港に続く大通りを通らず、宿から手配された舟で掘割を通って港に辿り着いた。既に乗船する商船は艀に繋がれていた。斎藤達が雇った人足たちは、総勢十名。銚子港周辺にはまだ幕府の息のかかる地頭が居て、人足の手配に精を出してくれた。島田魁の話では、新政府軍は江戸の近くの港を全て押さえこんでいるという事だった。銚子港もそうであろう。斎藤は素早く乗船を済ませて、敵に気づかれぬ内に出航させたいと思っていた。
最後の荷が積まれ、一気に隊士たちを二手に分けて乗船させた。ちょうど、水平線の向こうから朝日が昇って来た。眩しい。全身が焼かれるような痛みに覆われる。斎藤は羅刹の発作が起きる予感がした。だが、ここで倒れてはならん。そう思った時だった、「組長、こちらへ」と伍長の伊藤が叫ぶ声が聞こえた。三番組隊士たちは、通路を空けて斎藤が船室に駆け込めるように手招いた。千鶴が心配そうに自分を見詰めている。斎藤は、なんとか陽の光を避けて船室の影に蹲った。出航の合図が出され、いよいよ出発と思った瞬間、大きな物音がした。ドサドサという足音と何かが落ちるような音。直後に「乗り込め」という叫び声が聞こえた。
斎藤は表に出た、艀から薩兵と思われる半洋装の男たちが抜刀して船に飛び移っていた。既に、甲板では隊士たちと斬り合いが始まっている。斎藤も抜刀して、次々に敵兵に斬りかかった。敵兵は刀、槍を持っている。斎藤達の船は商船で、沢山の荷物が積まれていた。広い甲板の船縁には葛籠が積み上げられている。敵を甲板の端に追い込んでも、船の外に放り投げない限り、追い出す事ができない。もう一隻の船にも、敵兵が乗り込んでいた。人数で、二十名ぐらいだろうか。味方はその倍の数だ。暫くすると、ほぼ全員を制圧出来た。斬られた薩兵の身体が横たわる甲板で、完全に息の根を止めるように、梅戸と伍長の伊藤がとどめを刺していた。
船長は船室で頭を操縦室の床に埋めて震えあがっていた。船員の中には、銛を持って一緒に闘った者も居た。斎藤は、直ぐに船を出航させるように頼んだ。薩兵の武器を取り上げて、遺体は船の外に投げ捨てるように指示した。斎藤は、船室の奥に千鶴を探しに走った。一つ目の部屋に姿は見えない。二つ目の部屋を空けた時、甲板から。「雪村さん」「雪村君」と隊士たちが叫ぶ声が聞こえた。斎藤は嫌な予感がして、甲板に向かって走って行った。眩しい光の中。息が出来なくなった。全てがゆっくりに見える。遺体が積みあがった甲板は血の匂いが咽返す。だが、それよりも、隊士たちが、必死できょろきょろと辺りを見回しながら、千鶴の名前を叫んでいる姿の方が気になった。一体、どういうことだ。雪村が消えたのか。
全てがゆっくりと進む中、吉田俊太郎が半泣きになりながら、甲板の端で膝をついて積み荷を崩す勢いで引っ張っている。他の隊士も、そこに走って駆け付けて甲板の縁から海に向かって「雪村君」と叫んでいる。船外に放り出されたのか。雪村。斎藤は甲板を横切って、積み荷に駆け寄った。
「組長、雪村くんが居ません」
「積み荷の中に、隠れるように云ったんです」
「組長、葛籠に。わたしは荷の中に雪村君を放り込んで」
「蓋にわかるように、刀の柄で傷をつけたんです」
どの荷物かが判らない。そう言って隊士たちは慌てていた。荷物は崩れてしまっていて、ところどころ鎗で突かれた後があった。血にまみれている葛籠を平隊士が蓋を開けて中を確かめていた。斎藤も一緒になって葛籠をひとつひとつ確かめた。甲板の縁に近い所で、平隊士が「居ました」と大声を上げた。大きな葛籠の蓋を開けて中を覗き込んでいる。そこには千鶴が、小太刀を抱きしめるように抱えて目を瞑っていた。気を失っているようだった。葛籠の中には菜種油の瓶が入っていた。斎藤が覗き込んだ時、千鶴は大きな瓶と並ぶように小さく身を縮めて座っていた。抱き上げると、どこも怪我をしている様子はなかった。余程恐ろしい思いをしたのだろう。気を失ったまま眠っているようだった。斎藤は千鶴に怪我がないことを確かめると、ようやく無事に銚子から脱出が叶ったと思った。そして、隊士たちに甲板の後始末を命じ、千鶴を抱きかかえたまま船室に行って寝台に寝かせた。
——千鶴をどこか静かで安全な場所に匿ってやらねえとな。
平助の言葉を思い出す。平助、あんたは今どこにいる? 薩摩軍と江戸に戻ったのか。五兵衛新田を出てから、まともに言葉を交わさないまま。流山では互いに千鶴を匿う場所を見つけることが出来なかった。目の前に安らかな表情で眠る千鶴を見て、斎藤は平助との約束を思い出していた。
千鶴のことを頼むぜ。どんな事があっても守ってやらねえと。
これから会津までの道のりは、既に新政府に恭順している藩領を通ることになる。さっきのように敵に取り囲まれ乱闘になることもあるだろう。船の行き先は、常陸の国、霞ケ浦だと聞いている。そこに雪村が安全に過ごせる場所があれば。部隊から離れて……。女子に薩軍も手出しはしないだろう。雪村は、新選組と関わりはない。
*****
常陸から棚倉藩領へ
銚子を旅立った船は、翌日に霞ヶ浦の脇をずっと北上して板子の艀に舟を着けた。常陸の国、水戸藩領。すぐに浜街道を出て陸路をずっと行軍した。昼間は街道沿いの民家や寺に分宿し、夕方に行軍することになった。夜中から明け方まで休憩しながらひたすらに歩く。百名余りの隊の移動は、人足を雇う必要があった。幕府軍の証書を見せても、地頭は人足手配帳が庄屋から届くまで動かないと言い張る。斎藤は、この地を早めに去る必要があると痛感した。
水戸の地理に詳しい隊士の情報で、街道の先には【平方】という宿があり、そこからが奥州路になるということだった。斎藤が懸念していることがあった。五兵衛新田での合議で聞いたのは、奥州において会津藩は孤立しているという事だった。既に近隣藩は新政府軍に恭順の意を示していて、会津藩は二本松藩や庄内藩と共に、仙台藩と同盟を結ぶように交渉をしているという事だった。新政府軍につくか、旧幕府軍につくか。どの藩も新選組が領地を横切ることを許さないだろう。斎藤は、平方宿の手前で野営をして、斥候部隊に間道を探らせた。そして、斥候の調べて来た本道と並行する山道を棚倉藩領に出る事に決めた。棚倉に着くと、薩軍が居る様子がなかったので、そのまま宿をとって隊士たちを十分に休ませた。
棚倉の宿の一室で、斎藤は久しぶりに千鶴と語らった。駐屯所に居る時と同じように、千鶴は斎藤が布団に横になるのを見てからでないと部屋を下がらないと言い張って、斎藤を困らせた。もう何千回と「休んではおれぬ」と伝えて来ているが、いつかの様に、無様に千鶴の前で倒れるのも困ると思った。手を握っててやるから、安心して眠りにつけと千鶴に言われて、胸の辺りがこそばゆく、面映ゆい気持ちになった。自分の頬が紅潮していくのがわかった。斎藤は仕方なく、敷布団の上に腰かけた。
千鶴は安堵したように嬉しそうに自分を見詰めている。良い機会だと思った斎藤は、千鶴にこれ以上新選組に義理立てする必要は全くないと伝えた。この棚倉宿であれば、千鶴が安全に留まることができる。たとえ薩軍が占拠しても、千鶴が無事に江戸へ戻る手立てがある。
「あんたはこれ以上俺等と行動を共にする必要はない」
斎藤がそう言っても、千鶴は首を横に振った。「新選組を離れたら、わたしには帰るところはありません」そう言って、斎藤の脱いだ上着を丁寧に畳む千鶴は、どこか心許ない様子に見えた。江戸に実家があっても、帰ることができないのは、自分も同じであった。そうか、帰る場所のない身の上は同じなのだな。
江戸を離れる時、千住の渡しでずっと対岸の江戸を振り返り眺めていた千鶴の姿を思い出す。小石川の実家に戻らないと決心した時から、きっと覚悟を決めていたのだろう。温かい千鶴の小さな手を握りながら、気恥ずかしさは消えて行った。温かな感触と安堵、守りたいという気持ちと、立ち向かう力と……。
斎藤はいつのまにか深い眠りに落ちた。
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翌日も日中に休み、夕方から日暮れ、夜中にかけて行軍を続けて長沼に辿り着いた。雇った人足から、あとひとつ峠を越えれば、【勢至堂】に着くと教えて貰った。会津藩領だ。ようやく会津に辿り着く。傍で歩く千鶴の表情がぱーっと明るくなった。千鶴は、人足と一緒に湧き水のある場所を見つけて、斎藤にそこで休むように頼んで来た。苔むす岩と岩の間に、透き通るような美しい水がこんこんと湧いている泉があった。その水を飲むと全身が浄化されるような感覚が走った。力がみなぎる。千鶴が手際よく隊士全員に、人足が用意した握り飯を配って歩いた。百二十名。全員が怪我もなくここまでやって来れた。斎藤は、皆が無事なことに感謝した。そして、あともう一息で、土方と近藤の意志を全う出来ることが嬉しくて仕方なかった。
会津へ行きましょう。
あの時、雪村に強く言われなければ。俺は、ここにいる隊士たちを安房の国で討ち死にさせていたやもしれん。己の選択には、この者たちの命がかかっている。それを忘れるところだった。斎藤は、隊士たち全員を見回しながら、その傍でくるくると動き回って、食事の世話をしている千鶴を眺めた。隊士たちと笑い語らう小さな姿。この者には、改めて己の使命を思い出させてもらった。感謝する、雪村。
それから目的地の会津が近いということで、精力的に行軍した。明け方には勢至堂に辿り着き、会津藩地頭方に大いに歓迎された。そこから、人馬の手配がされて三代まで二日をかけて移動した。会津藩家老から直に伝令が届き、三代に宿が用意されていると知らされた。川辺にある大きな宿で、隊士百二十名全員で泊まることが叶った。三代は桜の木が至る所にあって、峠から見下ろすと花が咲き始めた集落全体が薄桃色に輝いていた。河原には温泉が湧き、そこで湯に浸かってゆっくりと骨休めが出来た。この三代での滞在中、斎藤の判断で、千鶴が男装をしているが女であることが隊士全員に周知された。現在の新選組は、甲府の戦以降に参加した隊士が半分以上。おなごが従軍している事に驚いていたが、新選組の重要な客人だと説明を受けた隊士たちは、斎藤同様に千鶴を敬うようになった。こうして、流山を脱出してから十日後に新選組は、会津若松入りを果たした。
四月十三日のことである。
つづく
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