ブログ【壬生のほたる、チャンバラのこと】

ブログ【壬生のほたる、チャンバラのこと】

先日、Yプロジェクトのお芝居を観に行ってきました。

「島田魁日記」を基にした池田屋事件前後の新選組の物語。年老いた島田魁が、幕末の日々を語りだすところから舞台は始まります。

史実の池田屋事件勃発までのきな臭い京市中(島原、壬生村屯所)が舞台。主役は近藤勇と斎藤一で、島原の遊郭「加志津や」の太夫たちと新選組隊士たちの恋愛模様を中心に人情話っぽいお芝居でした。

尊王攘夷過激派の志士、これに桂小五郎、岩倉具視、中川宮朝彦親王が暗躍し、政変計画を立てる中、新選組は市中取締りに勤しんでいます。時々、島田魁が日記を書き込む場面や、日記を読み上げて、前年の八月十八日の政変の説明をし、池田屋までの流れがとっても解かり易く、臨場感があって面白かったです。

ヅラ(桂小五郎)が物乞いに扮して、スパイのように至る所に出没し、岩倉具視がめっちゃ策士、中川宮もこれまた憎たらしい策士で、この三人に踊らされて「天誅」を実行する熱い勤皇の志士たちが(敵役だとしても)切なかったです。島原の華やかな女たちが、まるで薄桜鬼の君菊さんのように出入り客から情報を得て、必死に新選組に報せようとする。新選組屯所にも、長州からの間者として土方に兄を殺された「お菊」という女性が小間使いとして働いていて、土方に仇を討とうとしていて、(でも、土方は全く疑いもせず、お菊に親切で、密かに自分が斬った攘夷志士たちを弔っている姿に、お菊戸惑うみたいな場面も)斎藤一は無口で寡黙。太夫に釣れない態度をとっていて、沖田総司は体調が優れない様子で子供好き、藤堂平助は若々しく明るくて、池田屋では額を斬られて絶体絶命の場面もありました。史実として伝わっている部分が細かく描かれていて、新選組のヒューマニズムたっぷりな部分が素敵でした。

お話は史実にかなり脚色されています。小さな劇場でしたが、所狭しと繰り広げられる殺陣が素晴らしかったです。出ている役者さんは、アクション系の俳優さんばかりで、近藤勇、沖田総司、藤堂平助役の三人は本当に殺陣が素晴らしかった。勿論、斎藤役の加集利樹さんも。攘夷志士たちの殺陣は斬られ方が迫力満点でした。皆、ダブルキャストで、上演日によっては、攘夷志士と新選組が交代でやっているので、彼らも皆、ルックスもアクションも素晴らしい役者さんたちです。台詞も方言も、舞台効果、全て完璧で、本当に幕末の京の風景の中に自分もいるような気がしました。

チャンバラは、細かく丁寧な演出がされていると本当に恰好よくて痺れます。昔はテレビの時代劇でも殺陣シーンは一番の見どころ。毎回胸がすくような場面をみて役者さんや斬られ役の立ち回りを食い入るように見て夢中になったものです。時代劇は殺陣が上手でないと、興ざめしますよね。あと、余りにも現実的でない斬り合いも。リアリティがあるかどうか。そこが肝です。殺陣の前後の所作も、ちゃんと演出されていれば、とても時代劇らしく、本物の斬り合いのような緊張感も生まれます。

今回の舞台では、刀を抜いて構えた時に、近藤勇が、ゆっくりと相手を睨みながら草履を脱ぎました。斎藤一もそうです。めっちゃ恰好いい。そーいうとこ、そーいう所作が大事。斬り合いが終わった後、血ぶりをしてから刀を仕舞い。ゆっくりと身仕舞を整えて、屯所に戻ろうとか言いながら草履をさっと履いて颯爽と帰って行く斎藤一。めっちゃ本物の武士っぽくて恰好良かった。

こういった演出は、TV時代劇だと、池波正太郎作品でまだ観られます。鬼平犯科帳の「寒月六間堀」で仇討ちの助太刀をした鬼平(吉右衛門)が、斬り合いの後に自分の足袋の裏をパンパンと叩いて、砂埃を落としてから草履を履いてから帰る場面があって。砂埃が霧のように闇夜に舞って、限りなく渋くて、あの回のてっつあん、とっても恰好良かったです。 「雲竜剣」の回の殺陣も必見です。今確認したら、鬼平も再放送で、最新シリーズでも20年前に撮影されたものですね。確かに吉右衛門がお若いです。「寒月」にゲスト出演している中村又五郎は、本当に殺陣、所作が美しく本物の武士のようです。生前の歌舞伎舞台でも太刀さばきが素晴らしかったそうなので、天性なのかもしれません。又五郎は池波さんが大ファンで、「剣客商売」の秋山小兵衛をあて書きしていたそうです。又五郎が小兵衛役をやっているテレビドラマとかがあれば、本当に見たかった。藤田まことも素晴らしいけど、小柄で一見、弱そうな年寄りが凄まじい剣豪という設定(薄桜鬼の斎藤さんが後年、そうなりそうなイメージ)が素敵です。同じ無外流居合道ですしね。

今、BSフジで何度も再放送されている「剣客商売」では、秋山大二郎(渡部篤郎、山口馬木也)の殺陣シーンは必見です。道場稽古の場面も無外流の型の流れなど、ちゃんと取り入れられていて、細かい演出が見ものです。大二郎は清廉で剣術に真摯に立ち向かう様子は、若き日の斎藤さんっぽい。衣装も濃い藍の長着に袴、総髪でイメージが重なります。渡部篤郎の方が小柄で若くて斎藤さんっぽいかな。馬木也はちなみに長身のケツ顎ハンサムです。まきやの顎は色っぽい、ヅラも似合っているし。

このブログ、お芝居に出て来た「中川宮」について書こうと思っていたのに、ついついチャンバラを語ってしまいました。すみません。今構想中の江戸を離れた斎藤さんが上洛して、壬生村に現れるまでの話と同じ時期に「中川宮朝彦親王」が長州藩の攘夷派たちを排除しようと動いていた事は、壬生浪士が新選組となっていく流れの背景にもなっているので重要です。ちょうど、BSの歴史番組で孝明天皇の大和行幸が取り上げられていて、お芝居の内容はタイムリーで興味深いものがありました。また、今度小説構想のメモがてら、ブログに書いてみたいと思っています。

またこういった時代劇らしい時代劇のお芝居を観に行きたいと思いました。今年はもっと能狂言も観に行こうと思っています。能の太刀使いや動きは、とても美しく、真剣を扱う武士の理想的な動作だと、居合道剣術を学ぶ人が言っています。そういう見方で修羅物を見るのも楽しいものです。

小説は、戊辰戦争の物語の続きと、大股開きを同時に書いています。最近、斗南時代の夫婦話の短編も思い浮かんだので、そちらも近々アップしたいです。

それでは、寒さが厳しいので、くれぐれもご自愛ください。

ちよろず

P.S. サイトのマイナー改造をちょくちょく行っています。何かあればMailフォームでご連絡お願いします。匿名でも送信可能です。返信は基本サイト上では行わないので、こちらから返信が必要なときは返信用アドレスをお願いします。

コメントは受け付けていません。
テキストのコピーはできません。