雨宿り(共通ルート)

雨宿り(共通ルート)

薄桜鬼ゲームブック風小説

【雨宿り】を読むにあたって

本作品はゲーム本編沿いSSをゲームシナリオ風に仕上げたものです。攻略キャラは【斎藤一】さんと【原田左之助】さんです。どちらも千鶴ちゃんとCP設定です。

各攻略キャラ(各ノーマルルート、ハッピーエンドルートに分岐)の二本立て(斎千と原千)共通ルートから始まります。各ルートのルート分岐を選択しながら読み進めるスタイルです。

共通ルートでの好感度は斎藤さんも左之助さんも【高い】設定です。

物語の中に自然災害を想起させる場面がでてきます。不愉快に思われる方はブラウザを戻ってよむのを控えてくださいますようお願いいたします。

*どちらも分岐ルートによって性行為の描写を含みます。年齢に満たない方、苦手な方は読むのをお控えください。




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雨宿り

共通ルート

元治二年十月頃、時雨が続く季節の話

 斎藤の三番組と一緒に千鶴は昼から巡察に出ていた。

 祇園に出たついでに土方の用事で鬢油の買い物を済ませた千鶴は、斎藤が差し出した番傘の中に入り小走りに歩き出した。さっきまでの細かな時雨がいつのまにか大きな雨粒に変わっていた。雨脚がきつくなると思った斎藤は道で待っていた隊士達に、巡察を切り上げて屯所に向かうように指示をした。

 東大路通を下り始めた斎藤達は、松原通りまで着いた所で人だかりが出来ているのに出くわした。五条大橋の艀に川が増水して水が上がり通れなくなっている。大勢の人が引き返して来ていた。人の足が乱れる中、人々を誘導する大きな声が聞こえた。声の主は原田左之助だった。人混みをかき分けて斎藤と千鶴は左之助に近づいた。周りには、数名の平隊士が腕を広げて道を作って、一方向に人が流れるように声を掛けている。

 左之助は斎藤達の姿を認めると、十番組も巡察途中で屯所に戻ろうとしたが五条大橋が渡れなくなっていたという。四条まで引き返そうとしたが人が多くて道は塞がり、苛立つ人々で収拾がつかなくなってしまった。原田は周りを眺めながら斎藤達に説明した。そう話をしている間にも、雨が急に強く降り出した。千鶴は斎藤に促されて、もう一度来た道を四条に向かって引き返した。背後には左之助達も付いて走り出している。起伏のある道を斎藤は息も切らさずにずっと急ぎ足で進む。千鶴は必死に走っていた。もう草鞋も足袋も袴も泥水の中に浸かったようになっていた。だんだんと斎藤の傘から離れていく千鶴を、背後から左之助が自分の傘をたむけて雨よけにした。

「千鶴、辛そうだな」

 左之助が千鶴の横に並ぶと心配そうに顔を覗き込んだ。そして千鶴の背中を優しく支えるように後押しし始めた。千鶴は、幾分か前に足が出るようになって安堵した。斎藤が千鶴の様子に気づいて引き返して来た。千鶴の手を引くと、自分の懐から手拭いを出して千鶴の頭に被せた。四条まで走る。斎藤はそう一言千鶴に告げると傘で千鶴を庇いながら、どんどんと手を引いて走りだした。

 四条大橋は更に人混みになっていた。人だかりは全く流れず、人々は大声で叫び合っている。五条大橋の手前の混乱より更に状況は酷い。斎藤は千鶴を自分の傍に引き寄せ、決して離れぬようにと耳打ちした。徐々に人混みの中に分け入って行くと、四条大橋も通行止めになっている事が判った。

「人が流れたて」

「あかん。流されてしまう」

 人々が大声で注意し合っている。斎藤は、東詰の人々が一斉に橋から離れる事で暴動になると思った。左之助が既に、道を作るように平隊士と人の波を誘導しているが、土砂降りになっている雨の中、人々はその声を聞いている様子はなく、我も我もと道を三条に向かって上っていた。斎藤は決して千鶴の手を放さなかった。千鶴は閉じた番傘を抱きしめる様に抱えて斎藤に付いて来ている。

 なんとか大和大路に辿りついた。人の流れの勢いは凄まじく。斎藤と左之助は路地に一旦逃げ込んだ。

「千鶴、大丈夫か」

 左之助が千鶴の顔を覗き込んだ。もう頭から盥の水を被ったように全身ずぶ濡れの千鶴は、唇の色が無くなり震え始めていた。手を握っていた斎藤も千鶴の手が冷え切っているのを感じていた。そういえば、千鶴は巡察に出る寸前まで用事で動き回っていて、昼餉を食べ忘れたと言っていた。千鶴は頷いているが、このまま三条まで迂回して屯所に戻るのは厳しい様子だった。

「どこかで、雨が止んで橋が通れるようになるまでやり過ごした方がいい」

「ああ」

 斎藤と左之助が相談を始めた。この近所に宿を探そう。そう言って、傘を差し直した。

「千鶴、俺と斎藤でこれから手分けをする。雨宿りするが、俺か斎藤のどっちかとだ」

「千鶴を連れて行かない方が、三条まで上って様子を見に行く。橋が渡れたら、一旦屯所に戻って迎えに上がる。もし三条大橋も渡れなければ、引き返して合流しよう」

 千鶴は、答えた。

「斎藤さんと雨宿りします」→ルート分岐「斎藤さんルート」へ 

「原田さんと雨宿りします」→ルート分岐「左之助さんルート」へ

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