ブログ【小説更新情報】庇の影 その四
皆さん、こんばんは。
庇の影 その四をアップしました。
文久三年一月中旬、山口一は上京宮の脇橋そばにある吉田道場を訪ねます。
道場主の吉田房之介は、山口一の父親右介の知人。道場に斎藤さんを招きいれ住み込みで稽古をつけます。
時系列では、前回の「庇の影 その三閑話」で江戸の沖田さんたちが浪士集まりに参加する準備をしていた頃のエピソードです。斎藤さんは吉田道場の食客となって目録を授かっています。斎藤さんは、土方さんたちより二か月近く先行して京での生活を始めました。
吉田房之介は完全なオリジナルキャラクターです。斎藤一が壬生浪士に参加する前、実際にどういった経緯で上洛したのかは謎です。斎藤一の子孫に伝わる「藤田家文書」では、「山口一は十九歳の時、小石川関口に於て旗本の士を殺し、父祐助の相年世話をせし吉田某が京都に於て剣道場を開き居りし所に添書を持て至り、同家に寄寓す。吉田家に於て、剣道優れ居りし為、先生の稽古に行き居りしと」と書かれています。年齢から判断すると、江戸で浪士が集められ上洛する前後に江戸をでて吉田某の道場に通っていたようです。
この「藤田家文書」の記述から、最大限に想像を膨らませて創作しています。吉田道場の流派は「聖徳太子流剣術」、道場のロケーションは、くろ谷さんに近い丸太町通りの東山麓(現在の左京区宮の脇橋)と設定しました。以前書いた「水琴窟」で、斎千が訪れた禅林寺は吉田道場のある場所の近所です。丸太町通りに暮らしていたことから、斎藤さんはくろ谷さん周辺の地理に詳しいです。
聖徳太子流剣術については、古武術であることしか判らず、細かい流派の教えなどは捏造して書いています。斎藤さんは新たに出会った剣術の師、吉田房之介から実戦的で洗練された武芸をみっちりと教えこまれます。後に斎藤さんは、壬生浪士に参加して剣戟指南役となりますが、剣術を教える姿勢や教示方を吉田房之介から学びとります。
己の剣の使い道を心に決めようと軸が定まってきた斎藤さん。充実した様子です。旧暦の二月初旬は、今の暦に照らし合わせると三月二十日前後です。ちょうど今の季節です。
また続きを書いたらアップします。
よい週末をお過ごしください。
ちよろず