ブログ【境界線のこと】会津の斎藤さん

ブログ【境界線のこと】会津の斎藤さん

こんばんは。小説の入稿が一段落しました。濁りなき心に下巻のゲラ校正に入り、順調よく作業を進めています。濁りなき心に上巻は10月18日発行予定です。お申込みを頂いた方には来月20日頃にはお届けできるかと思います。もう暫くお待ちください。

会津に行った興奮状態から冷めつつも、久しぶりの外出で気分がリフレッシュしてここ数日、小説のリライト作業が捗っています。「濁りなき心に」の続きとして書いた「戊辰一八六八」の下描き原稿まで進みました。配本順序では「大股びらき」を次に予定していましたが、濁りなきの後に「戊辰一八六八」を出したほうが、時系列的に書きやすいので、このままのペースで進めます。配本予定は後日改めて更新いたします。

新選組展では禁門の変や戊辰戦争の史料展示が細やかで、今まで写真でしか見た事がなかった実物の配陣図を手にとる距離で見る事が出来ました。当時の手書きの絵図のインパクトは強力です。イメージが沸いて帰って来てから入稿寸前まで「濁りなき心に」の加筆をしました。何事も百聞は一見に如かず。

いつも会津に行くと、土地に恋していることを実感します。いつもなら会津若松駅ですぐに自転車を借りて猛ダッシュで城下を巡るパターンが、今回は徒歩移動だったのでゆっくりじっくり城下を味わうことができました。

今回の旅の間、会津に「薄桜鬼」の斎藤さん(絵のイメージや姿)が重なることがなかったです。これは新鮮な感覚でした。今まで斎藤一所縁の場所に行くと、ゲームの斎藤さんがその場に居たという鮮明なイメージが沸いていました。わたしが初めて会津に訪れた時は斎藤さんの写真が古いものしか出回ってなかった頃で、一緒に行った薄桜鬼ファンのお友達と完全にゲームの斎藤さんが居た場所だとイメージ投影して大層感激しました。そのあと暫くして五十代の斎藤一(藤田五郎)の写真が発見されて、実像のインパクトは大きかったです。それまでは阿弥陀寺に行くと、薄桜鬼の斎藤さんが眠っているような気がしてゲームをプレイしている気分そのままにドキドキしていました。これって、完全に現実とゲーム世界もしくは自分の想像の世界の境界があいまいな状態。本当に独特な感覚で、わたしは熱にうかされているようにその状態を楽しんでいました。一緒に旅行した別の連れにキモイと批判されても頭の中では止めることが出来なかったです。

昔からお墓をこっそり訪ねて、自分のイメージに浸るのは、頭の中ではぎりぎり大丈夫かなと思っていました。でも考えると、藤田家のお墓に眠っているのは、あの写真の斎藤一さんで墓誌に名前が連なっているのは奥さんの「藤田時尾さん」であり雪村千鶴ではない。当たり前のことだけれど、イメージ投影も非常に自分勝手なもので、どこまで大丈夫なのか常に疑問でした。お墓に手を併せていても、墓誌の時尾さんのお名前をみると正直奇妙な違和感でした。この感覚って非常に危ない(故人に失礼極まりない)。結局、薄桜鬼の斎藤一を完全に現実の藤田五郎にほぼ100%投影していて、150年前に存在したご本人の本来の姿やその人自身をちゃんと見ていない、感じていない自己をいつも感じていました。非常に申し訳ない後ろめたい気分。ちゃんと御本人を見ろよと自己批判するもう一人の自分がいて。

斎藤さんのお墓は「東軍墓地」の一角になっていて、東軍墓地側の献花台の前に立つと先の戦で命を散らした多数の東軍兵が埋葬されているのだなと厳かな気持ちになります。藤田家のお墓に手を併せた時に同じような感覚に今回初めてなりました。

先人に対する感謝の念に近い。戊辰の年に会津で戦い、その後も会津人として生きた斎藤一さんに改めて敬意を込めてお参りすることができました。

これは大きな心境の変化です。どうしてでしょう。もう薄桜鬼の斎藤さんに冷めつつあるのか、史料の藤田五郎のイメージが確定してきたのか、境界線をしっかり引けるようになったのは良かったなと思っています。

今回日新館で江戸時代の藩校の教育カリキュラムをじっくり見る事ができました。10才からの素読に始まり、礼法、天文学、武術、水泳、軍事。質素倹約を美徳とし、歴代のお殿様や家老が教育に力を入れたことがよくわかりました。義を重んじ武芸に秀でた会津の藩風。斎藤さんがぴったり嵌まったのがよくわかります。本当に性質や生き方にぴったりだったのでしょう。これって幸せなこと。大好きな土地や仕えたい御上がいるって、現代の私たちでも住みたい場所や学校、理想の職場や働き方を求めるのに似ています。

斎藤一は会津藩に多大な恩恵を受けた生涯だったと藤田家の御子孫が語っていらっしゃいました。斎藤さんは会津に残留し最後まで戦った新選組隊士として会津人に愛されています。斎藤さんも同じぐらい会津に恩義を感じ会津を愛していたのではないかな。この会津にぴったりはまった斎藤さんのイメージは、そのまま薄桜鬼の斎藤さんのイメージと重なります。そんな薄桜鬼のキャライメージがわたしは大好きです。公式が造り出した斎藤一像。

もう本当に最高です。

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