ブログ【隣に並んで歩くこと】

ブログ【隣に並んで歩くこと】

こんにちは。いつも二次小説を書きながらぼんやり考えていることをブログに書きます。

現代とは違い、昔は武家の男女が二人きりで肩を並べて歩くということはなかったようで、江戸時代を描いた映画やドラマでお武家の男性のうしろを離れて歩く女の人がよく出てきます。結婚している夫婦でも家の外を歩くときは夫の後ろを歩くのが普通だったようです。

最近また見直した映画「峠 最後のサムライ」でも、長年連れ添った妻を労うためにお座敷遊びをした主人公が、帰りは妻の手をひいて家まで戻るのを、妻が恥ずかしいからと後ろを離れて歩こうとする場面がありました。「はしたないですから」と断る妻。「いいだろう」と夫がそれでも手を繋いで歩こうと強引に手を引いて橋を渡り下男がその足元を提灯で照らしてついて来る。ほんの数分のやり取りですが、主人公の河合継之助が世の中の風習や社会規範などに拘らない、愛妻家の面をみせる場面でとても印象深い。

厳密には武家ではない雪村千鶴もおそらく江戸に暮らしていた頃は、二人きりで歩く場合男性のうしろを歩いていたと思います。二次創作的な想像では、幼少のときは父親の綱道さんや伊庭八郎さんに手を引かれて歩いていたのが、10才ぐらいになると自然に後ろを歩くようになる。武家の男子と肩を並べて女子が歩くことがなかった時代。

ゲーム本編の冒頭。男装で上洛した雪村千鶴が羅刹隊士と出遭った夜。命は助けて貰えますが、事情が事情なだけにそのまま壬生村の屯所に連行されることになります。逃亡しないように沖田総司が雪村千鶴の手を引いて歩く。後々判かりますが、総司君は雪村千鶴を女の子だとこの時点で気付いていました。知っていて女の手を引いて夜道を歩いていたのは、当時の感覚で考えると非常に不躾でもあり、同時に「新選組への仇となる存在」として警戒していたのか、ボディコンタクトを既にこの時点でとっていた総司君は凄いと思うし、乙女ゲーム的には総司君がヒロインとの関係性では他の攻略キャラより一歩先に進みだすような部分です。(総じて、総司君は性的ないやらしさがない。そこがいいです)

屯所の外に出られるようになった雪村千鶴は、男装で隊士たちと並んで歩きます。これも千鶴ちゃんは最初大層戸惑ったことだろうと想像しています。巡察に随伴するときは常に幹部の傍に並んで歩く。二次創作上、新選組の各組の巡察時の整列について細かく設定しています。三番組で千鶴ちゃんは後尾に死番の隊士と斎藤さんに挟まれて歩く。これも先に斎藤さんが隊士たちに指示をしていて、千鶴ちゃんは並び順や守られている状態であることを暫く後になるまで知りません。歩行中に乱闘が始まった場合は、隊士たちがどのように動いて雪村千鶴を守るかという決まり事も予め三番組隊士を集め伍長を通して指示がいっています。直接斎藤さんは雪村千鶴に指示や状況説明をすることはないです。ずっと後になって、二人が打ち解けてから千鶴ちゃんが斎藤さんを質問責めにして隊列のあらましを理解していく。そんな設定をしています(これで短編が書けそう)斎藤さんはあまり言葉にして説明しない。巡察が終わって隊列を解いたあと斎千は並んで歩きます。基本屯所に戻るまで斎藤さんは千鶴ちゃんの護衛役。馬や牛車が通る側に斎藤さんが千鶴ちゃんより少しだけ前を歩く。常に斎藤さんは周りを警戒しています。平助くん、左之助さん、新八さん、総司君の四人も同じように一歩先を歩く。でもこの四人はずっと話をしながら歩くので、横に首を向けなくても会話を保てる距離。土方さんは三歩以上前を歩きます。時折、話しかけるときだけ振り返る。千鶴ちゃんは小走りです。

軽鴨たちとは肩を並べるときもありますが、基本は、前に野村利三郎が歩き、千鶴ちゃんを挟むように背後に相馬主計が歩き護衛する。野村くんと相馬くんがぽんぽんと会話を交わすのに、千鶴ちゃんは笑いながら受け応えて楽しそうです。このように千鶴ちゃんが極自然に怪しまれることもなく、「はしたない」と不躾に思われることもなく平隊士や幹部メンバーと市中を歩くことが出来るのは、男装しているという要因が大きい。

斎千に関しては、まだ二人が気持ちを互いに確認し合う前、甲府の戦から江戸に敗走する時に手を繋いで歩きます。二人きりの夜道。千鶴ちゃんは恥ずかしがっていますが、これは斎藤さんが安全性を考慮してのこと。

男装を解いて、女の恰好をした時に自然に手を差し伸ばすのは左之助さんや伊庭さん。足元が暗いから手をつないでやろうかとスムーズかつ優しく誘います。ただならぬ仲のよう。総司君は、「行くよ」とさりげなく手をとる。平助くんは相当に照れながら。新八さんは、「すまねえが俺の真後ろにさっと入れるところを歩いてくれりゃあいい。刀を抜くときもあるかもしれねえし」と自分の腰に手をかけて笑いそう。手は繫がない。内心は相当に女の恰好をした千鶴ちゃんと一緒に歩くことが嬉しそうです。新八さんのこういった絶対に守ってくれそうなところが素敵です。

手を取り合って歩くのは、斎千では想いを告白した後。人目を憚らずに結構二人はずっと一緒に歩く。夫婦になってからもそうです。肩を並べて歩く姿で描写しています。その点では私の二次小説の斎千は現代的な振る舞いを沢山見せているかもしれません。意外に古風な夫婦の佇まいを、斎千を取り巻く周りの人達にさせています。風千はもっともそういった風に描きたい。

薄桜鬼でやはり男装して生活していた千鶴ちゃんというのはユニークですね。身の安全が目的だったけれど、斎藤さんたちと肩を並べて歩き、島原や祇園での宴席に参加できたのも表向きは男として振る舞っていたから。少々はしたなくても許された。そんな設定がおもしろいなと思います。

追伸:印刷屋さんより「斗南にて」の仕上がりが4月中旬になると連絡がありました。届きしだい発送いたします。予定より大変遅くなりすみません。

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