ブログ【小説更新】佐伯陸軍出張病院
【二次小説 更新情報】
こんにちは。明暁シリーズ35「佐伯陸軍出張病院」をアップしました。
以下本文ネタばれにつながるので、記事を畳みます。
斎藤さんは、高床山で右肋に銃創を負って黒澤村を経由して、佐伯に運ばれます。
藤田五郎さん本人によって後年【西南之役従軍履歴】に以下のように記録されています。
七月十二日大分縣下高床山ニ於テ弾丸ノ爲メ右肋二負傷
八月十五日大分縣下波當津ニ於テ帰隊
負傷箇所は【右肋】。弾丸によるもの。ここまでしか詳細はわかりません。黒澤村の位置が不明ですが、焼尾から現在残っている本道で、徒歩6時間半かかるので、当時の山道を夜間に搬送されたとなると、7、8時間は経過していたと思われます。
入院から五週間後の「八月十五日、大分県南部の波当津(はとうづ)にて帰隊」とあるので、完治に五週間かかっています。
以下は怪我についての私の考察です。
五週間で完治した右肋部分の銃創。おそらく肋骨のひび。銃弾が体内に残った場合、当時の銃弾の鉛中毒で重症化、もしくは死ぬことも考えられ、銃弾は貫通したと思われます。武器調達が乏しかった薩軍はこの頃、鉛の代わりに鉄を溶かして銃弾を造っていたらしく、斎藤さんが撃たれた傷も、鉄の弾の可能性が高いです。命中率は鉛より更に低くなるので、実際は極めて至近距離で銃弾を受けたと考えられます。
当時の医療技術はまだ、医療器具の消毒、傷口の消毒などの認識のない時代でした。モルフィネは既に戊辰戦争の頃にも普及していましたが、皮下注射での投与ではなく、経口で服用。麻酔はエーテル麻酔で、喉と鼻から呼吸で吸い込ませるという方法でした。銃創は、銃弾が身体を貫くので、筋肉、腱、血管の断絶、骨折に直接つながりますが、銃弾が体内に入った衝撃で、銃弾の周り直径10センチの範囲で小さな爆発のように体内の臓器に衝撃を与えます。この衝撃で内臓が損傷する威力があります。斎藤さんも銃弾は貫通はしましたが、恐らく衝撃で肋骨のひびと同時に肺損傷は起きていたと考えられます。もし、肋骨に銃弾が当たって、肋骨が複雑骨折していたら、肺の表面も破れて命に関わっていたかもしれません。五週間の入院を要した負傷は、当時の医療事情を見ても、決して軽い怪我ではなかったことは確かです。藤田五郎さんは本当にぎりぎりのところで命拾いをされて、強運と生命力の強い人だった事が伺い知れます。
薩摩軍は旧式のエンフィールド銃を使っていましたが、照準は不正確で小説本文に描いたような、薩摩の優秀な狙撃主でも敵に命中させるのは至難の業でした。もしくは不可能だったと思います。薩摩軍の武器は、大部分が旧式の銃だったといわれていますが、報国隊に一丁ぐらいは、スナイドル銃のような、後込めの照準命中率の高い鉄砲があったかもしれず、狙撃兵がいて、苦戦をしいられることも十分に考えられました。
斎藤さんの二番小隊は、七丁のスナイドル銃の使用申請を出し、実際に現地で受け取りに行った記録が残っています。後込め式で、高性能な銃なので、銃撃戦では薩軍を凌駕していたでしょう。二番小隊の銃隊頭の本城充之進は実在した、四等巡査で西南戦役の名簿に名前が残っています。実際に彼の従軍記録や出自の記録はなく、物語の本城充之進は私のねつ造設定です。
余談ですが、警視隊の中には、大坂陸軍臨時病院に搬送された負傷、疾病兵も多くいました。こちらではモルフィネの皮下注射が行われ、多くの兵士が腕や足の切断手術で命を救われました。日本近代救急外科医療の夜明けのような場所です。看病夫の一般人への募集も政府が大々的に行って、職業ナースの走りのような人も沢山生まれました。まさにクリミア戦争のナイチンゲールです。この臨時病院ネタで、随分前に千鶴ちゃんが職業ナースデビューする物語をプロットで組み入れて、想像していた時期があったのですが、小石川を離れて、子供を背負って看護師従軍するのもいろいろと無理がでてきて、断念しました。没ネタとしてここに記録しておきます。
ネタその一
西南の戦況を知って、居ても立っても居られなくなった千鶴ちゃん。松本先生を頼り、看護師として志願従軍します。大坂陸軍臨時病院で精力的に看護をしていると、津島くんが搬送されてきて、津島君が千鶴ちゃん愛をこじらせてしまう(なんだかなあ……斎藤さん豊後だし……)。
ネタその二
斎千の再会場所。大坂陸軍臨時病院。しっかりと抱き合う斎千。ナース姿の千鶴ちゃんを見て、一緒に来た津島君がまたこっそり片想いをこじらせてしまう。
どれも津島くんが片恋を拗らせてしまいます。
彼はいったいどうなるのか、自分で書いていてもわからないです。ずっと物語には出てくるので、どこかで物語が固まってくれればいいなと思っています(・∀・)/ガンバレ淳之介
豊後口での戦はほぼ終わりました。でも実際は、鹿児島が西郷軍と官軍の本戦地で、まだ続いています。物語は、斎藤さんの豊後での様子を中心に綴ります。
斎藤さんが早く千鶴ちゃんの元へ戻ってほしいとひたすら願いながら書き進めています。
ブログを読んで下さって有難うございます。
立春をすぎましたが、寒さはこれからが本番。
皆さん、風邪などひかれませんように。
ちよろず