ブログ【戊辰一八六八】あとがき
戊辰シリーズの連載開始は昨年四月、まだ旧サイトに小説を公開していた頃でした。
書き始めのブログを見てみると、「真改と史実の狭間の物語」と書いていますね。「史実沿い」は大げさな気がしています。お恥ずかしい限り。
今から2年を遡る2018年。歴博での戊辰150年記念のイベント展示「名もなき民の慶応四年」を見に行きました。横浜の市井に暮らす人々から見た戦争の記録が克明に、悲惨に、時にはユーモラスに紹介されていて興味深く思ったのをよく覚えています。それに触発されて、戊辰戦争のことをちゃんと知りたい、小説に描きたいと思いました。
薄桜鬼の描く戊辰の年は、まさに戦争で始まり敗戦を重ねる一年。幕府側(東軍兵)として戦う新選組幹部の物語です。真改華の章をプレイして、斎藤一ルートを細かく追ったらどうなるだろうと思ったのがシリーズを書くきっかけでした。
斎藤一(山口二郎)の戦った「白河の戦い」「母成峠の戦い」「北方戦線」は必ず描こうと思い、降伏前後の南会津戦線については、諸説から捏造しています。塩川謹慎中の暮らしについては、郡上八幡藩「凌霜隊」の記録から着想を得ました。
新選組の史実の部分について、浅学な上に物語の進行に不都合な部分を大幅に変えてあります。上にあげた「凌霜隊」は会津藩より正規軍として早くから認められ。大坂から将軍と一緒に江戸へ帰還した松平容保を護衛して会津若松城まで随行した由緒ある部隊です。籠城中も城内で戦い、降伏開城の儀式にも参加しました。他藩から馳せ参じて会津を助けた事は誉れ高いことで、松平容保は大変重く凌霜隊を扱いました。凌霜隊の記録は、沢山残っていて、敗戦後の謹慎生活など克明に記録されています。一方、非正規軍だった新選組の記録は乏しくて。小説で描いたように制限のある惨めな生活だったのだろうと推測想像して書きました。
斎藤さんルートの「悪者(ヴィラン)」として、雪村鋼道、南雲薫、風間千景、山南敬助の四人をどう扱うかは最初から決まっていました。鋼道さんの死は、風間が手を下すことになりましたが、実際は藤堂平助、山南敬助、斎藤さん、風間の内の誰かに斬られることになると思いながら書き進めて、最終的に「白河城占拠」のエピソードになりました。南雲薫は、原作斎藤さんルートでは千鶴ちゃんと絡むことが極端に少なくて、千鶴ちゃんは兄の存在を知らずに最後までというのが筋です。ちよろずルートでは幼少の頃の記憶は残っています。薫は複雑な想いを抱えたキャラクター。なので邪悪なままでは終わらせたくなくて、兄である魂が千鶴ちゃんを助ける場面を「白岩」で描くことにしました。
ちー様のことを書きます。
風間千景にとって雪村の郷と雪村千鶴は、絶対に守らなければならない存在。男鬼としての本能と、人間の手で鬼の郷が荒らされることを絶対に良しとしない気持ちから、白河戦線終盤のちー様は新政府軍兵を壊滅しようとさえします。小説内でもっと鬼世界全体の責任を抱えた存在として描きたかったです。命を賭してでも守ろうとした千鶴ちゃんに最後は救われ、その恩義はずっと風間の中にあります。以降ずっと千鶴ちゃんとその血族と郷を守って生きていく。風間の千鶴ちゃんへの愛は海よりも深く宇宙よりも大きいのです。ただ千鶴ちゃんが恋愛対象としてちー様を受け入れていないだけで(・∀・) ちー様は誇り高く気高くて素敵です。
山南さんは、会津を出た後白石に潜伏して、羅刹の解毒剤づくりに奔走します。仙台藩と西軍との橋渡し役として立ち回り、変若水を仙台に持ち込むことを松本良純に咎められ仙台城への入城が叶わないまま城下で西軍兵と戦い(諍い)不知火匡に羅刹隊を壊滅されてしまいます。その後、松本良純の手助けで恭順降伏後の仙台藩の下、城内で解毒剤づくりに励みます。命が短いことを悟った山南さんは薬をすべて藤堂平助に託します。平助くんは蝦夷へ渡り、箱館戦争へ参戦します。この辺りの流れは、明暁シリーズの「再会 希望の灯」に書いたので、続きとして読んで貰えれば。
戊辰の一年間を描いた物語。結末は翌年の二人の再会寸前で終わっています。斎藤さんが千鶴ちゃんに実際に送ったのは候文ですが、固くなりすぎるので最終的に読み下し文にしました。ほぼ一年近く離れ離れの生活を送った二人は越後高田で再会し、明治三年の夏に陸奥国斗南へ舟で渡り新生活を送ります。そして「斗南にて」シリーズへ続くと。
本シリーズで千鶴ちゃんが初めて上洛した頃から明治期までのクロニクルを描き終わりました。あとは、斎藤さんが壬生浪士組に加わる前の前章譚を仕上げるだけです。左之助さんの番外編と、そのほかに月影の抄のおきちづ、西国の郷での風千夫婦の物語、明暁シリーズ番外編もあと一篇構想を練っていて、これから書きたいものはまだまだ続きます。
そうだ、今回は途中で「銀星の抄」がリリースされて、素敵なエピソードをプレイしたことから、小説後半は多大な影響を受けました。過酷な戦いの中で二人の絆が深まるのは斎千ルートの萌えの骨頂ですね。私の中に生まれた数々の新たなイメージを大切に育てて醸していきたいと強く思いました。
また熟成したら甘い斎千を書きたいです。
長々と書いてしまいました。いつもサイトに読みに来て下さって有難うございます。
ちよろず