ブログ【小説更新情報】無患子

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皆さん、こんにちは。

戊辰一八六八の最新話「無患子(むくろじ)」をアップしました。

白河城奪還作戦が始まり、斎藤さんは会津兵と合兵して白河城下を占拠している新政府軍と戦います。

白河城が5月1日(新暦6月20日)に新政府軍に奪われてから、斎藤さんたちは白河から会津街道を上がった藩境周辺を転陣しながら戦いました。ほぼ3か月の間、猪苗代湖南の「福良宿」から「上小屋宿」までの会津街道(Aルート)、「福良」から「馬入峠」を経て白河の西側にそびえる山塊にある羽鳥街道(Bルート)を移動し、果敢に城攻めに向かいました。

この間に、ようやく「奥羽越列藩同盟」が成立し、東北諸藩が一致団結して戦い始めますが、兵数の数ではほぼ三倍の数だったにもかかわらず、銃砲の数では新政府軍は同盟軍を圧倒していたようです。

斎藤さん率いる新選組は、会津藩の中の一部隊として行軍していて。部隊規模は小さいです。記録を見ていると、白兵戦で切り込んで敵を圧倒していきますが、途中で敵軍に援軍が加わって突き崩されてしまう。最後は砲火を浴びて敗走する。あまり斎藤さんたちは後方支援に恵まれず、いい線をいったけれども、後半戦は負けたという記録ばかりです。残念ですね。

季節は梅雨が明けて本格的な夏を迎えています。当時の会津街道の宿は、福良や三代、長沼。街道の両側にびっしりと宿が並んでいたらしく、陣を組んで駐屯していた同盟軍の記録が残っています。

危険なので千鶴ちゃんは、基本陣屋に待機しています。斎藤さんたちは2、3日行軍して戻るというペース。まだ、この頃は新政府軍も白河から会津方面には進軍していなかったので千鶴ちゃんは安全です。

猪苗代湖から白河城までのルートをペイントで描いてみました。今回はAルートを移動する話がメイン。画像の左上の赤い星のある位置が、会津と白河藩の境にある雪村の里がある地域(白岩)です。完全に捏造設定。山深い場所で、鬼塚の結界に守られていて里の鬼以外は近づくことができない場所です。羽鳥街道Bルートに近いです。

白河城奪還作戦の戦争の部分をメインに書くつもりが、ムクロジの実をめぐる、斎藤さんと千鶴ちゃん、隊士たちとの風景を描くことになりました。

先週の5月8日は大好きな澁澤龍彦さんの生誕日。この週末は、澁澤さんを偲んで、没後30周年大回顧展の図録を開いて澁澤ワールドにどっぷりと浸って過ごしました。久しぶりに「ねむり姫」も読んで面白かった。もうサイコーーーー!!

亡くなられて30年。これまでも定期的に本屋さんでは澁澤龍彦フェアがリバイバル的に催されて来ています。数十年ペースですが凄いこと。私は澁澤さん的なものは、あらゆるところに存在していると信じています。薄桜鬼が好きなのも、ある部分残酷で浪漫に満ちたドラコニアっぽさを個人的に強く感じているからかなと思っています。

初めて会津若松に行った時、さざえ堂に急ぎ足で立ち寄ったのですが。あの日は、奇妙な既視感で、とっても衝撃的でした。澁澤さんがエッセイでさざえ堂に立ち寄って大好きだと書いていたことをどこかで覚えていて。記憶の中では、この奇妙な建物が、北陸金沢のどこか辺鄙な場所にあると思い込んでいたのです。夢の螺旋建築物。

ドラコニアの地平図録に件のエッセイ草稿写真とさざえ堂の前で撮った生前の澁澤さんの写真が載っていました。文章が素敵なのでここに抜粋を写します。

さざえ堂 二十螺旋のモニュメント(みづゑ草稿)

「貝殻のアナロジーによる、さざえ堂という命名も秀逸だと思う。ヨーロッパ風な幾何学的な空間概念を取り入れているとはいえ、それを完全に日本風なものとして生かし切っているところもおもしろい」

この近くでムクロジの実を見つけ、たくさん拾って帰った。

「ドラコニアの地平」図録より

「夢の博物誌」にこのエッセイが入っています。澁澤さんは植物学にも憧憬が深くて、プリニウスのように草花の話も博物学のような幻想的な伝承と一緒に添えることが多い。最後のムクロジの実を見つけて拾って帰ったというのが、小さな球体や螺旋のオブジェを好んだ澁澤さんらしい。

今回の二次小説の話に戻ります。

「ムクロジの実」からどんどん想像が広がって、今回のエピソードになりました。斎藤さんと千鶴ちゃんが互いに意識し始めた時期は戦争のさなかの暑い慶応四年五月ごろ(新暦7月)。死線をくぐり抜け、暗い闇の中にいる斎藤さん。一方、千鶴ちゃんの周りでは「光」「生」「命」が存在していて、斎藤さんを含め隊士たちは、無意識に癒されています。斎藤さんは若干淫靡な目で千鶴ちゃんを見ていますが。

もう少し白河戦線のエピソードは続きます。

読んでくださってありがとうございます。

急な暑さや、冷えで体調を崩しやすい時期です。

くれぐれもおいといください。

ちよろず

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