ブログ【権謀術数】黎明録山南敬助のイメージ

ブログ【権謀術数】黎明録山南敬助のイメージ

こんばんは。近所の桜が満開で、ほのかに香る花の匂いに気持ちが高揚します。

今回は山南さんのことを書きます。(多大に私の二次創作的解釈を含みます)

前回のブログ「意思や迷い」で、総司君に人を斬る事を奨励したのが山南さんだと書きました。黎明録では物語の冒頭で山南敬助は総司君と一緒に登場します。八木邸の井戸端の場面。龍之介にいきなり絡む横柄な総司君をたしなめ、叱るような態度で浪士の状況を説明し始める山南さん。口調が穏やかで優しい印象です。

浪士が江戸で集められて上洛した目的が着京した途端に「将軍護衛(をしながら攘夷)」から「江戸での尊王攘夷の実行」に翻った状況を山南さんが説明します。浪士の立場は不安定で流動的。皮肉な総司君をたしなめながら、優しい口調で龍之介に「伝えるべきこと」と「伝えないでおくこと」を的確に判断している様子。物語の説明役として山南さんは第三者的な視線に立っているような部分を見せます。

山南さんは物腰が静かで優しい口調が特徴。総司君の龍之介に対する皮肉に満ちた辛辣な態度も「少々おいたが過ぎますよ」と微笑みながらたしなめる。声優さんの声もあいまって独特の甘さを感じます。試衛館派が集まって話し合う場面でも土方さんや近藤さんが山南さんの判断や提案に従う場面が多い。知性の部分で試衛館メンバーは山南さんに一目置いている事がうかがえます。

山南さんは薄桜鬼本編で「変若水研究掛かり」の参謀として描かれ、新選組幹部で最初に変若水を服用します。黎明録では「変若水」は、会津藩を通し幕命で研究しているものとして、雪村綱道によって持ち込まれます。会津藩お預かりになった頃、浪士組内で有力だった新見錦(浪士組副長)が主に雪村綱道に対応し変若水を取り扱います。前川邸の自室で新見は変若水研究を独りで進め暴走していきます。

京に残留が決まったとはいえ、立場が流動的で資金面でも浪士は貧窮し会津藩に頼るしかない。「将軍護衛」や「市中見廻り」といった任務と並行して、「変若水研究」も秘密裡に進めなければならず、この闇の任務がずっと影を引きます。新見錦殺害後、変若水任務を引き継いだのが山南さんです。冷静な判断で山南さんは変若水研究が浪士に必要な事と受け入れていきます。

変若水開発も含め浪士の立場があやふやで、近藤さん達が望むようにはなかなか物事が進まない。黎明録では土方さんや近藤さんが幕閣や芹沢鴨らに翻弄される様子が描かれます。「誠」や「正義」が通らない。とても歯がゆい流れです。そんな中、山南さんだけは大局的に物事をみていて、浪士組が京でどういった立場を築き上げていけばいいのかを計画している。総司君が幕閣寄りの殿内を殺害し、隊内粛清が盛んになり、市中でも浪士組が不逞浪士を斬り殺して行く中、血生臭い活動を山南さんは否定せず奨励していく。変若水研究も彼の権謀術数的な計画の内の一つで切り札になると考えています。

近藤さんを始め、土方さんや井上さん、試衛館メンバーは変若水と羅刹化した隊士に対して非常に後ろめたい気持ちを抱えているのがわかります。大義のために仕方なく。これが土方さんや平助くんの心の根底にある。

大義のため。

山南さんは手段を選びません。浪士組の存続、新選組が更に発展するなら、非人道的な行動に及ぶ事も致し方ないでしょうという考え。山南さんは態度や口調が優しく冷静なため、その穏やかさの向こうに張り巡らされた謀は計り知れません。

山南さんの掛けている眼鏡のレンズの向こうの瞳がハッキリ見えない。

きらっと光る硝子の光。そんな描写を私は自分の二次創作の中で書く事が多いです。おそらく、山南さんは試衛館派の中で一番のマキャベリスト。土方さんが仕方なく「覚悟をして」受け入れた変若水を山南さんは大義の為、冷静に受け入れ使いこなそうとする。新作OVAでもそういった意識の違いが描かれていたように感じました。

権謀術数を操り表にはそれを見せない。そんな山南さんは味方につけると大層頼りになりそうです。絶対に敵にはまわしたくない。参謀として非常に優秀な山南さんを土方さんは信頼しています。黎明録では余り剣を振るう姿が描かれないのが残念です。文武両道でバランスのとれた人物。物事を先まで見据える能力。非常に冷静で知略にたけた山南さんは、まさに参謀向けの人物というイメージです。黎明録ではそういった役目をそつなくこなし、アドバイザーとしての立ち位置をしっかり固めます。

黎明録を山南さんの前章譚として見ると、以降の変若水研究に傾倒していく様は悲劇的です。新選組の暗部であり完全に秘匿された闇の世界で組織を支えていく選択をする山南さん。一方で本来バランスの取れた人物が変若水に希望と絶望を同時に感じながらどんどん偏向になっていく。己をも権謀術策に含めて動いていく生き様は土方さんとはまた違った潔さがあり、もの悲しい格好良さがあります。

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