ブログ【常在戦場】峠 最後のサムライ

ブログ【常在戦場】峠 最後のサムライ

こんばんは。ずっと公開延期になっていた「峠 最後のサムライ」の上映が開始しました。満を期してという感じです。

峠は司馬遼太郎原作の歴史小説。幕末の長岡藩家老、河合継之助が戊辰戦争の最中、中立独立を守ろうと武備し新政府軍の猛攻に遭い会津に落延びる物語です。主人公継之助は、先見の明で既に国家や諸外国の情勢に詳しく、聡明で勇猛果敢、大らかで機智に富んだ魅力的な人物として描かれています。

映画は冒頭からとても分かりやすく幕末の流れが語られます。長岡藩は小さな藩で、藩主の牧野家は譜代の佐幕派。継之助は藩主の信任も厚く、新政府軍が攻めてくる状況で全てを取り計らうようにと主命が下ります。

台詞で継之助がスイスのような永世中立国を目指していることがわかります。同時に部屋の掛け軸や書に、継之助の信条が現れている。

常在戦場もその一つ。いつでも戦場にいる心構えで事をなせという心得。長岡藩藩主牧野家の家訓であり藩風として知られています。継之助は「戦争回避」の歎願書をしたためて西軍総督府に取り次いでもらうように頭を下げにいきます。映画の半分は、ひたすら頼み続ける姿が描かれます。ですが、この真っ当な訴えは、新政府側から完全に退けられてしまいます。

己を尽くして天命を待つ。

この一言で継之助は、最後の選択としての徹底抗戦に舵取りをしていきます。戦闘シーンは物凄く写実的。もうとにかく画面が美しい。黒沢組が映画のテクニックを余すことなく使って、信濃川の静かな水面から榎木峠の連なる山々の中に武備行軍する軍兵の姿が映し出されます。リアリズムの追及。倒れている雑兵の動き、所作、画面の端端にまで細やかに描かれています。台詞や語りも素晴らしくて、言葉がするすると心に入ってきます。私は小泉監督の脚本が大好きです。畳みかけるようにテーマが繰り返される。

画面の中に沢山の情報が詰まっている。何一つ取りこぼしがないぐらい完璧。

物語の最初の方にとても印象的な台詞があります。継之助が親友の川島億次郎に「抗戦」する状況になった場合の覚悟を語る場面。

「元気の気。勇気の気。己のこの身体はない。ただ気が風のように吹き抜けるだけだ」

心意気だけで立ち向かう。不退転の覚悟。このセリフが伏線のようになっています。

この映画は戊辰150年記念の翌年に上映される予定でした。コロナ蔓延の影響で3回延期されてほぼ二年近く待っての上映。その間、現実の世界では戦争が起き。まるでリアルの映し鏡のようになっていて、作品のメッセージをより強く感じました。

とてもいい映画でした。三日続けて映画館に足を運び同じ映画をみるのはレザボアドッグズ以来です。

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